宮崎駿のアカデミー賞

受賞

部門 作品
2024 長編アニメ賞 「君たちはどう生きるか」
デジタル全盛の時代に、一人の老巨匠が鉛筆と紙で、自分の心の内側だけを見つめて描いた物語が、世界最高の映画の殿堂を制圧した。

2024年の有力候補には、圧倒的な映像技術で革命を起こしたと言われた『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』があった。多くの人が「スパイダーマンが獲るだろう」と予想する中、83歳の監督が率いるスタジオが、昔ながらの「手描き(セル画スタイル)」で勝利したことは、世界中のアニメーターに「表現の本質は技術の進化だけではない」という衝撃を与えた。

これまでの受賞作は、老若男女が楽しめるエンターテインメント性の高い作品が大半だった。しかし、今作は非常に抽象的で、宮崎監督の自伝的要素や死生観が投影された「極めて個人的で難解な作品」です。「子供向けの娯楽」としてではなく、純粋に「一人の芸術家の深い内面を描いた映画」としてアカデミー会員(プロの映画人たち)が票を投じたことは、この部門の評価軸が「楽しさ」から「芸術的深み」へとシフトした瞬間でもありました。
2014 名誉賞 数々の功績に対して
2009年以降、アカデミー賞本戦(授賞式)とは別枠で開催される「ガバナーズ賞(Governors Awards)」という式典で授与されるようになりました。宮崎監督が受賞したのは「第6回ガバナーズ賞」です。

「アニメーションの分野で、数々の忘れがたい長編映画を制作し、その物語性と芸術性で世界中の人々に影響を与え、映画というメディアを豊かにした功績」に対して贈られました。

宮崎監督は黒澤明監督に続き、日本人として2人目のアカデミー名誉賞。

宮崎監督と長年の親交があるジョン・ラセター氏(当時ピクサーおよびディズニー・アニメーションのチーフ・クリエイティブ・オフィサー)が務めました。

宮崎監督は、1990年の黒澤明監督と同様に現地へ赴き、自らオスカー像を受け取っています。 2003年の『千と千尋の神隠し』や2024年の『君たちはどう生きるか』の授賞式(本戦)は欠席されていましたが、この名誉賞の贈呈式には出席し、スピーチを行いました。

この「ガバナーズ賞」は、本戦の授賞式(例年2月〜3月頃)に先駆けて行われる特別な式典です。そのため、宮崎監督が名誉賞を受賞したのは「2014年度(第87回)」のアカデミー賞のサイクルの一環ですが、贈呈の儀式そのものは2014年の11月に執り行われました。

1990年(第62回)に名誉賞を受賞した個人は、黒澤明監督ただ一人でした。この点は、宮崎駿監督が受賞した2014年の状況とは制度も重みも大きく異なります。

1990年当時、名誉賞は現在のように別日程の「ガバナーズ賞」ではなく、世界中に生中継されるアカデミー賞授賞式のメイン会場で贈呈されていました。

他に「ジーン・ハーショルト博愛賞」という別の特別賞を受賞した人物(ハワード・W・コッチ)はいましたが、純粋な「名誉賞(Honorary Award)」としてオスカー像を受け取ったのは世界中で黒澤監督一人だけでした。

メインの授賞式の非常に長い時間を割いて、スティーヴン・スピルバーグとジョージ・ルーカスという二大巨頭がプレゼンターを務めるという、破格の待遇でした。

一方、宮崎監督が受賞した2014年は、一度に複数の人物が名誉賞を受賞するスタイルが定着しており、受賞者は宮崎氏を含めて3名でした。

<受賞スピーチ▼>
2003 長編アニメ賞 「千と千尋の神隠し」
八百万の神々や湯屋(銭湯)といった、非常に日本的・神道的なモチーフが満載の作品です。その独特の世界観が「見たこともない魔法のような体験」として世界中で絶賛されました。当時ピクサーのトップだったジョン・ラセターが、この作品の芸術性に惚れ込み、北米配給の陣頭指揮を執ったことも有名です。プロの映画人たちが「これは映画の宝だ」と認めたことが、受賞につながりました。

ノミネート

部門 作品
2014 長編アニメ賞 「風立ちぬ」
2006 長編アニメ賞 「ハウルの動く城」



宮崎監督以外のジブリ作品のノミネート歴

部門 作品
2017 長編アニメ賞 「レッドタートル ある島の物語」
マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督
2016 長編アニメ賞 「思い出のマーニー」
米林宏昌
2015 長編アニメ賞 「かぐや姫の物語」
高畑勲(いさお)